基礎がなくても建築物? トレーラーハウスの扱いを審査目線で整理する

森の中に建つ、ガーランドライトが灯るコテージの写真 審査の現場から

今回のテーマ

 前回は検定の話でしたが、今回は審査の仕事から。建築基準法の一番の基本、第2条の「用語の定義」から、第1号の「建築物」を取り上げます。題材はトレーラーハウスです。

条文を確認しよう

建築基準法 第2条(用語の定義)
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

 長い条文ですが、まず押さえたいのは冒頭の「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」という部分です。

トレーラーハウスを見かけたことはありますか?

 キャンプ場やグランピング施設の宿泊棟、道路沿いのカフェなど、トレーラーハウスを宿泊施設や店舗として使っている例を見かけることが増えました。

 屋根も壁もある。でも、車輪が付いていて、基礎はなく、置いてあるだけ。「土地に定着していないんだから、建築物じゃないでしょ?」と思うかもしれません。でも、そう判断するのは早計です。

「土地に定着する」の意味

 「土地に定着する」は、基礎で地面にがっちり固定されている状態だけを指すわけではありません。用途上、一定の場所に長く置かれて使われ続けるものも含まれる、と考えられています。

 トレーラーハウスについては、平成9年3月31日に建設省(当時)から通達(住指発第170号「トレーラーハウスの建築基準法上の取扱いについて」)が出ています。ポイントは、規模(床面積、高さ、階数など)、形態、設置状況から判断して「随時かつ任意に移動できるもの」は建築物に該当しないものとして扱う、という点です。逆に言えば、随時かつ任意に移動できないものは建築物として扱われます。

判断のポイントは「随時かつ任意に移動できるか」

 では、どんな状態なら「随時かつ任意に移動できない」とされるのでしょうか。実務でよく参照される『建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例』(いわゆる青本)などでは、次のような例が挙げられています。

  • 移動の支障になる階段、ポーチ、ベランダ、柵などが設けられている
  • 給排水、ガス、電気、電話、冷暖房などの配管・配線が、工具を使わずに外せる簡易な着脱式になっていない
  • 車検証がなく、公道を適法に走行できない(ナンバー、保安基準、自賠責などを満たしていない)
  • 特定の場所に長期間置かれ、継続的に使われている

 つまり、車輪があるかどうかではなく、「今すぐ動かそうと思えば動かせる状態か」「設備は簡単に取り外せるか」などを総合的に判断する必要があるということです。

審査の現場から

 先日、森の中にトレーラーハウスを複数棟並べて、サウナを併設したコテージにしたいという計画がありました。添えられていたイメージ写真がとにかくステキで、木々に囲まれたウッドデッキ、湯気の立つサウナ、夜は焚き火……と夢が膨らみます。Chillってみたい……はっ! 仕事をせねば。

 気を取り直して審査目線で見てみると、確認したいことがたくさんあります。宿泊施設として同じ場所に長く置いて使うのか。棟と棟、サウナとをつなぐデッキや階段が、移動の支障にならないか。給排水や電気は、工具なしで外せる接続になっているか。車検を受けて、いつでも公道を走れる状態か。どれか一つでも欠ければ、建築物として扱われる可能性があります。

 「基礎がないから大丈夫」と思い込んで計画を進めると、後から建築物として確認申請が必要だった、ということにもなりかねません。なお、具体的な判断の基準や運用は、特定行政庁によって細かく定められている場合があります。計画の段階で、所管の行政庁や確認検査機関に早めに相談するのがおすすめです。

まとめ

 「建築物とは何か」は、建築基準法を使ううえでいちばん最初の入口です。トレーラーハウスのように一見グレーなものこそ、条文の言葉に立ち返って考えるのが大切だと改めて感じています。構造の勉強とあわせて、こうした基本も少しずつ整理していきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました