今回のテーマ
今日は審査の現場から、カーポートの話です。窓口や電話で本当によく聞かれるのが、「カーポートって確認申請いるんですか?」という質問。よく一緒に出てくる「でも……」にもお答えしながら、審査する側がどこを見ているのかを整理します。
よく聞かれる「でも……」
- 「カーポートって確認申請いるんですか?」
- 「壁がない、ただの柱だけだけど?」
- 「ホームセンターで簡単に買えるよ?」
- 「DIYで、素人の自分が建てたんだけど……」
一つずつ見ていきましょう。
壁がなくても、カーポートは「建築物」
建築基準法 第2条第1号(抜粋)
建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、(中略)をいい、建築設備を含むものとする。
条文は「屋根及び柱若しくは壁」です。屋根と柱があれば、壁がなくても建築物になります。カーポートは、地面に柱を立てて屋根をかけたもの。つまり、立派な建築物です。
トレーラーハウスの記事でも「建築物とは何か」を取り上げましたが、カーポートは基礎に柱を固定するので、「土地に定着する」かどうかで迷うこともほとんどありません。
ホームセンターで買えても、申請がいらないとは限らない
カーポートは、ホームセンターでもネットでも、部材のセットとして手軽に買えます。でも、買えることと、確認申請がいらないことは別の話です。
DIYで自分で建てた場合も同じです。誰が建てたか、どこで買ったかに関係なく、建築物を建てるなら建築基準法のルールがかかります。そして、確認申請をする義務を負うのは「建築主」、つまり施主さんご自身です。
確認申請がいるかどうか、審査する側が見るところ
カーポートの相談を受けたとき、まず確認するのは次の3つです。
- 住宅の敷地への増築か?
- 用途地域は?
- 防火地域か、準防火地域か?
カーポートは、ほとんどの場合、住宅の敷地に建てます。住宅と車庫の「敷地」の話で書いたとおり、住宅とその車庫は用途上不可分なので、同じ敷地の建築物です。だから、カーポートを後から建てるのは、住宅の増築として扱います。
建築基準法 第6条第2項
前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
都市計画区域などの中にある住宅にカーポートを増築する場合、確認申請がいらないのは、防火地域・準防火地域の外で、増築する部分の床面積が10㎡以内のときです。準防火地域の中なら、小さなカーポートでも確認申請が必要になります。また、1台用のカーポートでも、屋根の大きさは10㎡を超えることがほとんどです。
そして、確認申請がいらない場合でも、建蔽率や高さの制限などのルールは守らなければなりません。用途地域を確認するのは、そのためです。
よくある失敗
実際によくあるのが、こんなケースです。
- 「業者に任せていたら、確認申請をしていなかった」
- 「カーポートを建てたら、高さ制限の道路後退ができなくなった」
1つ目は、施主さんが「業者さんがやってくれていると思っていた」というパターン。でも、申請の義務は建築主にあります。見積もりや契約のときに、「確認申請は必要ですか? 誰が出しますか?」と一言確認しておくと安心です。
2つ目は、少し専門的な話です。道路斜線(前面道路との関係による高さの制限)には、建物を道路から後退させると、その分だけ制限がゆるくなるルールがあります(法第56条第2項)。
建築基準法 第56条第2項(抜粋)
前面道路の境界線から後退した建築物に対する前項第一号の規定の適用については、同号中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは、「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離(当該建築物(地盤面下の部分その他政令で定める部分を除く。)から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものをいう。)に相当する距離だけ外側の線」とする。
後退距離は、建築物から道路境界線までのいちばん短い距離で決まります。小さな物置や低い塀など、政令(令第130条の12)で定める部分は除いて測れますが、道路ぎわに建てるカーポートは、ふつうこの例外に当てはまりません。
つまり、住宅を道路から後退させて道路斜線をクリアしていたのに、道路ぎわにカーポートを建てたことで後退距離が小さくなり、住宅が道路斜線の制限にかかってしまうことがあるのです。住宅を建てたときは適法だったのに、後からカーポートを足したことで違反になってしまう。これは本当にもったいない失敗です。
確認申請をしないとどうなる?
確認申請が必要なのにしていなかった、あるいは建てた結果ルールに合わなくなった場合は、違反建築物になります。毎日10分 #4で取り上げたとおり、違反建築物には、特定行政庁から是正の命令が出されることもあります(法第9条)。
それに、将来の家の売却や増築、リフォームのときに、「このカーポート、手続きされていませんね」と問題になることもあります。
審査する側のひとりごと
カーポートは、壁もなく、手軽に買えて、自分でも建てられる。だからこそ「建築物」という感覚が持ちにくいのだと思います。でも、カーポートも住宅の一部です。
建てる前に、敷地の用途地域と、防火地域・準防火地域かどうかを確認して、迷ったら建築士さんや確認検査機関、行政の窓口に相談してください。「付ける前の一本の電話」が、いちばんの近道です。

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