その1では、検査済証とは何か、そして国の「既存建築物の現況調査ガイドライン」を紹介しました。今回は、そのガイドラインの中身と、「そもそも、どうして検査済証がないのか」について書いてみます。
ガイドラインが想定していること
このガイドラインは、既存建築ストックの有効活用を目的に、増築等又は用途変更を行おうとする場合を想定して、建築基準法に適合しているかどうかの現況調査の方法が示されています。
現況調査は2つの調査
現況調査では、次の2つの調査を行います。
- 調査1 検査済証の交付状況等の調査
- 調査2 現地調査
ここで、検査済証があれば、簡易な現地調査で済みます。でも、検査済証がない場合は、しっかりした現地調査が必要になります。ガイドラインでは、調査1の結果によって、現地調査(調査2)の方法が3通りに分かれています。
| 調査1の結果 | 現地調査(調査2) | 調べる範囲 |
|---|---|---|
| 検査済証がある | 調査2-① 簡易な現地調査 | 既存不適格である可能性のある規定だけ + 規定に適合しない改変がないか |
| 検査済証がない (工事の着手時がわかる) | 調査2-② 現地調査 | すべての規定 |
| 検査済証がない (工事の着手時もわからない) | 調査2-③ 現地調査 | すべての規定 |
(既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)の内容をもとに整理)
検査済証がないと、調べる範囲が一気に広がります。なので、「検査済証がない」と聞くと、「これは大変なことだぞ」と身構えてしまうのです。
そもそも、どうして検査済証がないの?
建築基準法関係法令集は、私が建築を学び始めたころから、冊子の厚さが2倍になるほど改正が繰り返され、告示も増えています。技術的助言なども次々に出されて、運用も時代によって変わってきました。
完了検査についても、現在ほど厳密に扱われていない時代がありました。特に、木造2階建て住宅などの旧4号の建築物は、検査済証がなくても建物を使うことができた(使用制限がなかった)ので、完了検査を受けていない建物が多いのです。
検査済証の交付を受けるまで建物を使ってはいけない、というルールは、法第7条の6に書かれています。
建築基準法 第7条の6第1項(抜粋)
第六条第一項第一号若しくは第二号に掲げる建築物を新築する場合(中略)においては、当該建築物の建築主は、第七条第五項の検査済証の交付を受けた後でなければ、当該新築に係る建築物(中略)を使用し、又は使用させてはならない。(以下略)
以前は、この使用制限の対象に旧4号の建築物は入っていませんでした。でも、2025年4月の改正で、木造2階建て住宅は「新2号」になり、第6条第1項第2号の建築物に入りました。今は、新築の木造2階建て住宅も、検査済証の交付を受けるまで使うことはできません(4号特例の縮小の記事もどうぞ)。これからは、検査済証がない住宅は少なくなっていくはずです。
検査済証がない = 違反、とは言い切れない
検査済証がない理由は、完了検査を受けていないからとは限りません。
- 完了検査を受けて検査済証が交付されたけれど、検査済証を紛失しただけで、台帳には記載がある
- 完了検査を受けていたけれど、完了検査の台帳に記載漏れがあった(可能性はゼロではありません)
- そもそも完了検査を受けていない
検査済証が手元になくても、特定行政庁で「処分等概要書」の閲覧や「台帳記載事項証明書」の発行を受けることで、検査済証の交付状況を調べられる場合があります(ガイドラインの調査1)。それでも、何十年も前のことなので、いまとなっては検査済証がない理由はわからないことが多いのです。
なので、検査済証がないから手続き違反だ、と判断することはできません。建物そのものに違反(実態違反)があるかどうかも、調べてみないとわからないということになるのです。
また、調査をして、今の基準に適合しない部分があることがわかったとしても、それが「既存不適格」なのか、「不適合」なのかを整理する必要があります。
- 既存不適格:建てたときは適合していたけれど、その後の法改正などで今の基準に合わなくなったもの
- 不適合:建てたときから適合していなかったもの、あとから改変して適合しなくなったもの など
同じ「今の基準に合っていない」でも、どちらなのかによって、増築などのときの扱いが大きく変わります。
審査する側のひとりごと
この既存不適格の判断も、なかなかややこしいのです。この話は、またどこかで書きます。


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